『一度京都にお越しいただき、弊社のものづくりについてしっかりとお話をし、お互い問題がありませんでしたら、お取引を開始させていただければと思います。』
昨年12月ごろから、お店に置きたいと考えていたブランドさんにお声掛けを始めた。
これは、その際MITTANのご担当者様から頂戴したお返事の一部です。
MITTANというブランド自体を知ったのは学生時代のことでしたが、自分のお店をもつにあたり、定番ブランドのひとつとしてMITTANを選んだ最大の理由が、この一文に表れていると思います。
MITTANとは
世界のあちこちに残る伝統的な衣服や布を愛し、その歴史からひもといて、今、つくる。それがMITTANの「あたらしい民族服」です。
生地だけでなく縫製糸、ボタン等付属品に至るまで、国内外に古くから伝わる天然素材を使用。流行に捉われることの無い、永く続く服を生み出しています。
MITTANでは洋服=西洋の民族服と捉えており、自分たちが提案しているものが洋服という認識がありません。・・・パターンや素材使いといった服作りを構成する複数の要素で洋服にとらわれないあたらしい民族服を目指していると捉えていただけると幸いです。
・・・今多くの人はどこで自分たちの服が縫われ、生地が織られ、糸が紡がれているかを知りません。また、国内で製造される服は全体の3%に過ぎません。物理的にも精神的にも遠くに行ってしまった服への感覚を少しでも取り戻す事ができれば、自分たちが次に着る服について再考してもらえるのではと思います。
MITTAN ブランドサイトより引用(一部省略)。
背景に確固たるストーリーがありながら、現代の日本の生活にしっくりと馴染むMITTANの服たち。加えてそのブランドコンセプトから、服の修繕も行っているので長年ご愛用頂けます。
OCガラ紡ジャケット
素材の開発からデザインまで一貫してブランドのコンセプトを体現したというこちら。
MITTANのモノづくりの特徴がよく分かるので、ご紹介します。
デザインはボタンを使用しない前開きのジャケット。襟や前立てを折り返して着用することもできますし、肌寒い時に襟を立てると自然と前立てが重なり合うパターンでつくられています。
襟を折ったり、巻き物を重ねたり、様々な着こなしが楽しめそうです。
袖口はカフスが無い為、体型に合わせて折り返して着用できるように。
袖丈が調整できて、肩幅が決まっていないので、性別、体型をあまり限定せず、多くの方に着て頂けます。
衿端に、ションヘル織機によって作られる生地耳をそのまま使用することで、身頃は少し斜めに仕上がります。
そのため、着用した際服に少し動きが出るようになるのです。
素材にも要注目。
緯糸には「ガラ紡」でオーガニックコットンの落ちワタを混ぜた綿を紡績した糸を、また経糸には絹の製糸に使用できない部分を再度紡績した絹紡紬糸を使用。
それらの糸を、さらに「ションヘル織機」で織ったオリジナル生地です。
ガラ紡機は、明治時代後半に日本で考案された最も古い日本製の紡績機。現在稼働しているのは2、3件程と、大変貴重な製法です。
またションヘル織機も明治大正期~1960年代頃まで使われていた旧式の織機です。
ガラ紡によって作られる糸の節感が低速で織られるションヘル織機独特の柔らかさと相成って、まるで手織りのような風合いに。
ごくごく柔らかな肌触りながら適度にハリがあり、着用した際の肌馴染みの良さには驚かされます。
程よく肉感のあるコットン55%、シルク45%の混紡素材ですが、シルクは天然素材の中においても機能的な一面を持つ素材として知られています。
涼しさを感じられるのにも関わらず保温効果も高い相反する2つの機能を持ち合わせていて、日本の「春」と「秋」に必然的に合い、過ごし易く感じさせてくれます。
そして実は、リバーシブルで着用可能。
裏返すと縫製の剥ぎ部分が表に見え、異なる表情のジャケットとしてお楽しみ頂けます。
お色は着用の[藍×胡桃]の他に、[胡桃]と[濃黒]をセレクトしています。
民族服としての過度なディティールを省いたシンプルなデザインと、日々、生活に寄り添う道具のような使い勝手の良さ。
これこそMITTANのつくり出す『あたらしい民族服』なのです。
話を戻して・・・
話をセレクト理由に戻します。
冒頭で書いた通り、MITTANのお取り扱いにあたり実際に京都のアトリエに足を運び、デザイナー三谷さん、スタッフの方と3人で2時間程度お話をしました。
お取引の条件等について、というよりは、なぜ僕が浜松でお店をやるのか、という芯の部分から、MITTANのモノづくりのことなど。
正直な話、こんなブランドさんはなかなかありません。あくまで重要視しているのは、MITTANのモノづくりに共感するかどうか、なのです。
そして結論、僕自身とても共感しました。
MITTANのモノづくりは正直、効率性とか生産性、コストという面では良くありません。
そもそも貴重な天然素材を主に使うし、わざわざ手間の掛かるディティールを採用する。
長く服を着られるように、お直しも色の染め直しもする。
定番的に同じものを作り続ける。そのためにも、いっしょに服をつくる工房や布の工場に、常に仕事を供給し続ける。
でも、これからの時代の作り手としての在り方がそこにはあると感じています。
インターネットやSNSで情報が簡単に手に入る今の時代、目先のお金だけを見ている作り手(売り手もですが)はきっと見透かされ、淘汰されるはずです。
語弊を恐れずに言うと、MITTANのような「健全な作り手」は、そんな今の時代につい忘れがちになる大切なことを思い出させてくれる、そんな気がするのです。
そしてMOONSTARの記事でも書きましたが、お店として、そんなブランドを皆様にご紹介し、これからも残していく義務があるとも感じています。
毎度のことながら、皆様におかれましては難しいことは考えず一度袖を通してみてください。
一見個性的なデザインに見えるMITTANの服ですが、着てみると驚くほど着やすく、普段着として馴染んでくれますよ。
MITTANの商品一覧はこちらからどうぞ。