OUTIL/セレクト理由/TRICOT AAST

 過去のブログでも書いた気がしますが、僕が服にどっぷりと浸かるきっかけになったのはヨーロッパ古着です。

 もっと言えば、ヨーロッパのワークウェアやミリタリーウェアでした。

 古着と言えばまだアメリカ古着一辺倒だった当時、それはそれでたくさん買って着てきたつもりですが一方でヨーロッパ古着に魅了されていたのも事実です。
 アメリカものと比較すると、ワークウェアひとつとっても潜在的なヨーロッパの”美意識”を感じ取ることができます。色、素材、ディティール・・・やっぱりどこか違うんですよね。

 そしていざ自分のお店をやろうと思い立った時、そんな僕のルーツでもあるヨーロッパの風を感じる服が必然的に多くなることに何の違和感もありませんでした。

 そして、そんなお店をやるにあたって、OUTILをセレクトしない理由は見当たらないんです(色々な事情が重なって取り扱いスタートは2年目になってしまいましたが・・・)。

OUTILとは

 「OUTIL」とはフランス語で「道具」の意味。衣服を道具として捉えるとき、それはどんな役割を果たすのか。その答えを探るべく、OUTILは古くから伝わるフランスのワークウェアから多くの手がかりを得ています。

 日本国内での技法を用いた生産はもちろん、風合いに拘り抜くデザイナーは自らフランス現地を訪れ、現在では貴重とされるフランスの伝統的な染色技法などを研究。
 職人とも密なコミュニケーションを行いながら、その生産背景も大切にして丁寧に作られたアイテム達は、まるでビンテージウェアさながらの奥深い経年変化を楽しませてくれます。

デザイナー宇多さんの「人となり」

 デザイナーの宇多さんは、デザイナーである以前に職人だと思ってます。宇多さんのインスタグラムのストーリーをご覧頂ければ分かると思うのですが、素材開発、染色の色出しに常に全力なのです。
 そのため、毎シーズン同じ素材はほとんど出ませんし、色も若干変わります。アップデートし続けています。

 もうひとつ、宇多さんが大切にしているのは経年変化の先。新品の状態でももちろん完成度が非常に高いのですが、1年後、3年後、10年後・・・の表情がとにかくすごい。間違いなくヴィンテージだと思われるような(もちろんヴィンテージには絶対ないオリジナルなのですが)経年変化をします。
 着用を繰り返すほどに次着用するのが楽しみになる、究極のサスティナビリティとも言えます。

 また宇多さんは、人と繋がる天才だとも思います。これだけ新しい生地、染色方法、新しい形を開発し続ける(理想を追い続ける)ためには当然一人では完結できません。時には全く服に関係ない誰かを巻き込むこともあります(現に今シーズン、宇多さんが大好きなワインやコーヒーを応用して新たな染色に挑戦しています)。
 宇多さんは誰に対してもフラットに優しく接してくださいます。そのため宇多さんの周りには、いつも多くの人がいて、一人ではできない多くのことを成し遂げてしまいます。

 職人気質×人と繋がる天才の宇多さんが作るモノは、今後も非常に楽しみです。

TRICOT AAST

 OUTILを代表するプロダクトのひとつ、TRICOT AAST(トリコア)。いわゆるバスクシャツなのですが、OUTILのは一味も二味も違います。

▶︎OUTIL TRICOT AAST ”ECRU/RED”[生成/赤] ¥20,900-

 まずひと目で分かるビッグシルエット。
 宇多さんがフランスで出会ったビッグサイズの古いバスクシャツがデザインソースになっており、肩幅や身幅、袖ワタリにもゆとりを持たせたビッグシルエット。

 もちろんただ大きいだけではなく、着丈や袖幅も含めてバランスを調整。着てみると普段着としてしっくり馴染みます。
 袖はロールアップしても良い雰囲気。

 セントジェームスのようなトラディショナルなバスクシャツへのリスペクトは踏まえつつ、年齢・性別関係なく雰囲気良く着用できるバスクシャツとは?を追求したOUTILならではの答えです。

 今シーズンはパネルボーダータイプ。生地は薄すぎず厚すぎず、つるっとした気持ち良い肌あたり。
 元々はフランス海軍で運用されていたヴィンテージのバスクシャツをベースに作られています。

 そして何と言ってもフランス製

 バスクシャツと言えども、なかなかバスク地方で製作されるものは少ない中で、フランスはバスク地方で60年以上営んでいるカットソーメーカーで生産され、生地を編むことから裁断・縫製に至るまで全ての工程を行っている正真正銘のバスクシャツなのです。

 実際にフランスに住んだ経験があり、フランスのワークウェア、ミリタリーウェアとフランスの人々をリスペクトする宇多さんだからこそできること。
 こんな日本のブランド、他にはありません。

 お色は先にご紹介した”ECRU/RED”に加え、3種類。全4色展開です。

▶︎OUTIL TRICOT AAST ”OFF/NAVY”[白/ネイビー] ¥20,900-

▶︎OUTIL TRICOT AAST ”OFF/BLACK”[白/黒] ¥20,900-

▶︎OUTIL TRICOT AAST ”BLACK/OFF”[黒/白] ¥20,900-

 そうそう、フランスメイドのバスクシャツなのでSAINT JAMES同様環境負荷の少ない染料が使用されています。またフランスで使用される水の影響とも言われますが、OUTILのバスクシャツも長年愛用していくと色の抜けが生じます
 経年変化が非常に楽しみですね。

フレンチヴィンテージに想いを馳せて

 今、古着界ではヨーロッパ古着が盛り上がっています。それと同時に、国内外問わず様々なブランドがユーロヴィンテージ(特にフレンチヴィンテージ)をベースにモノづくりをしています。

 もちろんそれは何も否定することはなく、むしろ服好きの一人として嬉しく楽しいことではあるのですが、では一体どれだけの人々がプロダクトの奥の背景にまで想像を膨らませて(実際に体験して)服に携わっているのか・・・と考えると、それほど多くないはずです。

 フランスとフランスの人々を誰よりも愛し、良い意味で「人たらし」な職人の作る道具としての衣服。
 是非長年ご愛用頂き、経年変化のその先にある景色を見て頂けますと幸いです。