Cale/セレクト理由/HEMP HERRINGBONE JACKET

 美術館独特の、ピンと張り詰めた空気が好きだ。

 真っ白な壁にただ一枚、絵が展示されている。

 ゆっくり静かに近づいていく。

 絵の迫力に圧倒され、息を呑む。オーラを感じる。

 時間が過ぎるのも忘れ、絵の鑑賞に没頭する。

 不思議と周りの音も聞こえなくなり、ただ一枚の絵と対峙する。

 気づくとそれまで感じていたモヤモヤや不安が、スッと消えてなくなっている。

 美術に触れることは、僕にとって日常から解き放たれることでもあります。

 そしてCaleの服には、そんな絵画に通ずるものがあると思うのです。

Caleとは

 衣服のブランドであると同時にコンテンポラリーアートのギャラリーでもあるCale(カル)。
 二つは共通した哲学に基づいて構成されます。

 クリーンであること。
 コンテンポラリーであること。
 ハイクオリティーであること。
 ユーモラスであること。

ファクトリー×デザイナーズ

 Caleの服は、異彩なオーラを放っています。
 その秘密を紐解くのに、まずはデザイナーの佐藤氏のことをご紹介します。

 佐藤氏は美大出身というやや特殊な経歴を持つデザイナー。大学在籍時に自らも作家活動をしつつ、今のギャラリーオーナーにも通じるキュレーションやイベントの企画などを行っていました。
 ファッションの世界に入ったのは27〜8歳の頃で、お父様の会社でテキスタイルの基本から学び始めたそう。

 そこで織りや編み、染色や縫製などを勉強して、2016年にCaleを立ち上げるのですが、もうひとつ強みとして縫製工場も自社で持っているのです。
 つまり自社で素材が作れて、縫うことができる。モノづくりの背景だけを見ればファクトリーブランドのような立ち位置ですが、最大の違いは素材ありき、縫製ありきではなくあくまで佐藤氏の「こんな服を作りたい」という欲求から服作りがスタートする点。

 と、文字だけで書いても全ては伝わりにくいと思うので、実際に今季のアイテムを見ながら感じてください。

HEMP HERRINGBONE JACKET

 その名の通り、ヘンプ(大麻)を100%使用した糸で仕立てた、ややゆったりシルエットのジャケット。
 当店で大麻・・・と聞くとMITTANがまず想像されます。そのビジュアルから、MITTANのプロダクトとは全く異なる方向性を感じることができますが、素材という観点から共通点があるんです。

 そんなヘンプを素材に、やや肉感のあるヘリンボーン生地を使用しています。今季のメイン素材(と勝手に思っている)なのですが、正直こんな素材使い見たことない。

 やや肉感がありながら非常にしなやかさを感じる素材で、天然素材ならではの風合いの良さが春夏はもちろん秋冬にもしっくり馴染みます。
 また大麻は経年変化が素晴らしいことも魅力のひとつ。このように肉感のある大麻は、着用を繰り返していくとデニムのようにアタリがついてきて、生地もさらにしなやかに柔らかく育ちます。

 都会的でクリーンなビジュアルからは想像できない素材感と経年変化に、まず驚かされるのです。

身長170cmでサイズ3を着用。

 シルエットはと言うと、ゆったりと肩を落としたシルエット。
 ジャケットですがカバーオールやカーディガンのように気負わず羽織ることができます。
 通常相反するようなリラックス性と上品さがうまくミックスされた、Cale独特のバランスです。

 デザインはシンプルな3つボタンのジャケット。
 ボタンを留めてみると分かって頂けると思うのですが、リラックスしたシルエットでありながら決してオーバーシルエットではないんですね。
 

 ここも良くて、いわゆるトレンドは知っているけど沿わない、あくまでデザイナー佐藤氏の作りたいものを作る・・・というスタンスがよく表れていると思います。
 デザイナーの(ある意味)天邪鬼な意向がよく分かるデザイナーズブランドは実は稀有なものだったりするのです。

 色々言ってますがパッと見て面白いのは、やっぱり縫製(ステッチ使い)ではないでしょうか。
 ジャケットとして非常に綺麗な仕立てになっていながらも、目を引く大胆なステッチ使い。このバランス感覚が非常に面白く、Caleならではの感性で今回はこちらのジャケットをセレクトしています。

 かと言って奇抜だと普段着として馴染まないんですが、ご安心を。袖を通してみると、普段着ているアイテムと不思議と調和していきます。

MODEL : 170cm / 50kg 着用サイズ3

▶︎ジャケット Cale HEMP HERRINGBONE JACKET ”ECRU”[生成]
▶︎カットソー MITTAN 強撚絹紬糸ワイド長袖 “生成”
▶︎パンツ EURO MILITARY
▶︎シューズ BIRKENSTOCK Kyoto Suede Leather SFB ”Midnight”

 MITTANの世界観とも、ユーロミリタリーの世界観とも調和します。
 というより、ある意味無国籍感の漂うCaleの服は、あらゆるジャンルの服と服とを繋げる役割を持つと思っています。

 ▶︎Cale HEMP HERRINGBONE JACKET ”NAVY”[ネイビー]

 もう一色、ネイビーもセレクトしています。こちらも良い色・・・!

あらゆる服の架け橋として

 実際に着ていても、あるいはハンガーに掛けているだけでも、異彩を放つCaleの服。
 無国籍で無性別で、でも無味無臭とはまた違った、とても今の時代(※流行、トレンドと同義ではない)らしいCaleの服。
 そんなどのブランドとも異なる色を持ったCaleは、言うなればどんなブランドと合わせても魅力的に映ります。

 そしてそれは、美術館の白い壁に飾られた絵画のようでもあり、お部屋にインテリアとして飾られた絵画のようでもあります。

 出口の見えない長いトンネルを走っているような閉塞感を感じる今日この頃。
 新時代の服を身にまとい、気分を上げていきませんか。